老後の財産管理を考える①認知症と後見制度

近頃「人生100年時代」と言われています。

日本は世界に名だたる長寿国です。
その寿命まで、元気でいられれば一番いいのですが、病気で介護が必要になりながら寿命を迎えることも少なくありません。

「介護が必要」となった理由は「認知症」が上位に来ています。
いつか自分の親が、自分自身がなるかもしれない。

もし家族が認知症になったら、「地域包括支援センター」に相談したり「ケアマネージャー」と相談したりしながら施設に入るのかなどを決めていくことになると思います。

では、その認知症になった本人所有の財産はどうなるのでしょうか?

本人の預金口座は、銀行が「本人が認知症である」と知った場合、凍結される可能性があります。
また、不動産については、認知症で判断能力がないとなった場合、契約行為ができませんので、どうすることもできない状態になります。
例えば、本人が施設に入所し、入所費用が掛かる上、自宅が空き家になるので「家を売りたい」と思っても、できないわけです。

ここで、この八方ふさがりの状況を解決していくための制度や契約のご紹介をしていきます。

成年後見制度とは

認知症、 知的障害、精神障害などの理由で、ひとりで決めることが心配な方々は、財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)などの法律行為をひとりで行うのがむずかしい場合があります。

また、自分に不利益な契約であることがよくわからないままに契約を結んでしまい、悪質商法の被害にあうおそれもあります。

このような、ひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援(意思決定支援)を行い、共に考え、地域全体で明るい未来を築いていく。それが成年後見制度です。

厚生労働省HPより引用

「後見人」と呼ばれる方が本人を保護・支援する制度です。
後見人の仕事として、本人の不動産や預貯金などの財産を管理したり、本人の希望や体の状態、生活の様子等を考慮して、必要な福祉サービスや医療が受けられるよう、介護契約の締結や医療費の支払などを行ったりします。
ただし、食事の世話や実際の介護は後見人の職務ではありません。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度というものがあります。

法定後見制度とは

本人の判断能力の低下の程度によって段階はありますが、すでに判断能力が不十分である場合この制度を活用することになります。
この制度は、本人や家族、市町村長などが家庭裁判所に申し立てることによって、家庭裁判所の審判を経て後見開始となります。

法定後見人になる人は、家庭裁判所で選任されますので、家族が希望してもその希望が通るとは限りません。法定後見人は職業後見人と呼ばれる専門職の方がなるケースも多くあります。

任意後見制度とは

本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる人を指定し、将来その人に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておく制度です。
この制度は、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所に申立てをし、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が発生します。
この段階で任意後見人が委任された事務を本人に代わって行うことになります。

法定後見人の選任は家庭裁判所が行うので希望が通るとは限りませんでしたが、任意後見人は本人の意思により、家族でも友人でも専門職の方でもなってもらうことができます。

ただし、この制度を活用するためには本人がまだ十分判断能力を有している段階で行動しなくてはなりません。

後見制度のまとめ

後見制度を活用するには、必ず「家庭裁判所」が関与することになります。

後見人は家庭裁判所へ事務の報告をする義務があります。
(任意後見人は任意後見監督人に報告し、監督人から家庭裁判所へ報告されます)

また、法定後見人には必要があれば監督人がつき、そして任意後見人には必ず監督人がつきます。
家族が後見人になればその方の報酬は無くてもいいかもしれませんが、職業後見人の方や監督人は報酬が発生してきます。

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