老後の財産管理を考える②認知症と家族信託

前回の記事では、後見制度についてご紹介しました。

今回は、前回の冒頭で心配になった「財産」について考えます。

本人が認知症になったとき、本人所有の財産を家族が勝手に動かすことはできません。

認知症になってしまった後、家族が「家を売って、そのお金で本人の入所費用を捻出したい。」と考えてもできないのです。

前回の記事にあった、「法定後見人をつけて、その方にお願いしよう。」と考えても、自宅の売却は難しいかもしれません。

後見人は本人を保護・支援する制度です。自宅の売却は本人に大きな影響を与える行為であるためかなり慎重な判断となります。そして法定後見の場合、家庭裁判所の許可が必要になりますので、「どうしても本人のために必要である」という判断材料がなくてはなりません。

認知症になってしまってから法定後見人をつけて、自宅を売却するというのは、かなりハードルが高いと思います。

また任意後見の場合は、任意後見契約において本人が自らの意思で処分権限を与えているため家庭裁判所の許可は必要ありませんが、任意後見監督人から指摘を受けないようしっかりと管理していく必要があります。

家族信託とは

家族信託とは、自分が認知症などで財産管理ができなくなってしまった場合に備えて、家族に財産管理を任せる契約をすることです。

家族信託の特徴

・家庭裁判所は関与しない
・信頼できる家族に頼むことができる
・必要な分だけ任せておくことができる
・家族に任せるので基本的に毎月の報酬はかからない
・受託者(財産管理をする家族)が不動産を売却等することができる

家族信託での財産管理方法

家族信託契約において、息子が本人の現金1,000万円と自宅を管理する契約をした場合

・現金は、息子の信託専用口座に入れる
・自宅は「信託登記」を行う

現金は、息子が新たに信託専用口座を作ってそこに入れておき、必要があるときのみその口座から引き出して本人の為に使います。第三者が見ても、本人の財産と息子の財産との区別をすることができます。

また、「信託登記」を行うと、登記簿上、「息子にこの条件で信託しています」ということが分かるようになっているので、不動産会社も安心して息子と契約することができます。

信託契約の効力発生

家族信託契約は、信託契約を締結した時点から効力が発生します。
認知症などで判断能力が低下したのを待つわけではありません。

自分が元気なうちから家族に財産管理を任せるということに抵抗があるかもしれませんが、裏を返せば、家族が行う財産管理状況を元気なうちに確認することができるので、「しっかり管理してくれてるか」ということを判断できる機会になるのではないかと思います。

もし、実際やってみて契約書の内容が実情と合わないと感じたら、本人が判断能力を有しているうちなら契約の内容を変更することもできます。

家族信託のまとめ

家族信託は自由度の高い契約書を作ることができます。

ただし、家族信託は任意後見と同様、「契約を交わす行為」ですので、本人が十分な判断能力を有する時に行動を起こす必要があります。

また、家族信託契約書は、今後の人生設計をしながら契約内容を考えていく作業が一番重要になります。ぜひ、知識を持った専門家にご相談していただくことをおすすめします。


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