遺言と死後事務委任
遺言は、個人の意思を明確に示す文書で、財産の分配方法、特定の人への遺贈、遺言執行者の指定などが記されます。法律で正式に認められた手続きで、遺言者が亡くなった後にその内容が実行されます。
死後事務委任は、遺言とは異なり、個人が亡くなった後の事務手続きを特定の人物に任せる契約のことをいいます。これには、葬儀の手配、公共料金の解約、遺品の整理などが含まれます。遺言のように財産の分配に関する指示ではなく、実際の事務的な手続きを行うためのものです。
遺言に葬儀や埋葬の方法を盛り込むことも可能ですが、遺言事項ではないため法的な効力はありません。つまり、遺言に盛り込んでも、その内容を尊重するかどうかは遺族の判断に委ねられます。※祭祀主宰者は遺言で指定ができます。
また、遺言書はしばらく経ってから開封されることもあるので、すでに葬儀が執り行われた後に初めて故人の意思を知るということになる可能性があります。
遺言書と死後事務委任契約は、双方を補い合うように作成しておくことがベストです。
死後事務委任契約の重要性
死後事務委任契約は、本人(委任者)が、自身の死後に葬儀・納骨(散骨)や役所への届出、遺品整理、各種契約の解約・精算などの様々な手続きを行ってもらう方(受任者)を決め、生前に契約をするものです。
身近にご家族がいらっしゃれば、このような手続きはご家族に行っていただければよいのですが、
- ずっと一人で暮らしており、両親とも他界している。
- 配偶者が他界していて子供もいない。身近に頼れる親族がいない。
- 子供がいるが遠方に住んでおり、手続きを頼めない。
- 親族とは色々あり、疎遠になってしまった。
- 配偶者が高齢で手続きをするのが難しい。
- 配偶者が病気等で体を動かせない。
上記のような場合は、自身の死後に不安が残ってしまいます。
昨今、孤独死の増加や空き家問題など色々と取り沙汰されていますが、その裏にはこういった不安やリスクを抱えている方が多いのではないかと思います。
死後事務委任契約は、資格なども関係なく誰とでも結ぶことができます。親しくしている知人でも、業者でも構いません。ですが、ぜひ長いお付き合いになる受任者ですので、じっくりと時間をかけて信頼できる専門家を探し、その方にお願いすることをおすすめします。
先述のとおり、遺言書と死後事務委任契約は双方を補うように作成されることが大事ですし、単身者の方であれば、生前の事務委任契約と任意後見契約、死後事務委任契約をセットで作った方が良いケースもあります。
自分にはどんな準備をするべきかを一緒にしっかり考えてくれる、信頼できる専門家と出会えることが何より大切です。
生前の事務委任契約・任意後見契約・死後事務委任契約をセットで作るメリット
単身者の方は、セットで契約をした方が良いケースもあるとお伝えしましたが、そのメリットについてお話します。
そもそも、それぞれの契約がどのようなものなのかですが、生前の事務委任契約は、判断能力が十分にあるうちから、入院手続きや預貯金の引き出し、病院への支払いなどを任せる契約です。月1回程度、連絡を取ってもらったり訪問してもらったりするように決めておけば、もし、体調に異変があった場合(認知症が進んでいるなど)、早期に気づいて対応してもらうこともできます。
任意後見契約は、将来判断能力が低下したときに備えて、自分が信頼できる人を後見人として任命するための契約です。この契約を結ぶことで、将来の財産管理や生活支援などを任意後見人が代わりに行うことができます。
将来判断能力を失った場合でも、信頼できる人がご本人の意思を尊重しながらサポートしてくれる制度です。
任意後見契約の代理権の範囲は登記されますので、対外的にも証明することができます。
なお、死亡届について、任意後見人・任意後見受任者も提出できます。
これらの契約と死後事務委任契約をまとめて契約をすることで、長いお付き合いで信頼関係を築いていくことができ、死後の事務委任も安心して任せておくことができます。
特に身寄りのない方にとっては、元気なうちから見守りをしてくれる人がいるのは心強いのではないでしょうか。
まとめ
上記契約すべてでやはり大事なところは、”信頼できる方”にお願いするということですね。
正直なところ、生前の事務委任契約・任意後見契約・死後事務委任契約を一人のお友達にすべてお任せするのは荷が重いのではと感じます。
その点、専門家であれば、報酬はかかってしまいますが、事前に報酬額の相談もできますし、何より、最適な契約を提案し、手続きにおいてもスムーズに行ってくれますので大変安心感があります。
一度相談をしてみたいという方は、ぜひ当事務所にご連絡ください。